
吃音を告白した「とくダネ!」亡き小倉智昭アナが教えてくれた、誰もが話しやすい場づくりとは?
平日毎朝、情報番組「とくダネ!」の冒頭に5分以上、自分の意見を語り続けた司会者、小倉智昭氏。先日12月9日、闘病の末息を引き取りました。飄々とした語り口が印象的だった小倉氏は、自身が吃音に悩んだ経験から、「話を最後まで聞く」ことを番組では心掛けていました。「話を最後まで聞く」ことは、吃音とどのように関係するのでしょうか。
吃音があるくやしさからアナウンサーに
吃音があると、発声や発音に問題がないにもかかわらず、ことばの一部を繰り返す、ことばの一部を引き延ばす、ことばがつっかえて出てこないなど、流暢に話すことが難しくなります。小倉氏は小学生の頃、自己紹介の出だしで言葉がつまり、同級生にばかにされた苦い経験がありました。
見返したい一心で話しやすくする方法を懸命に見出し、小倉氏は大学卒業後の進路にアナウンサーを志望しました。就職試験では、「家に帰るとどもるが、マイクの前では絶対にどもらない」と宣言。狭き門を勝ち抜きました。
1年目で抜擢された実況中継では、固有名詞で言葉につまる状況に対応すべく、情景描写に工夫を重ねたそうです。それが功を奏してアナウンサーとして脚光を浴び、やがて小倉氏は朝の情報番組を長年続ける有名司会者となりました。
「話を聞く」のは吃音の裏返し
小倉氏といえば、歯に衣着せぬ物言いを記憶している人が多いでしょう。何も知らなかった当時の私は「自分の考えを伝えたいという意欲の強い人」という印象を持っていました。
しかし、小倉氏が番組で心掛けていたことは、話すことではなく、相手の話を最後まで聞くことでした。それは、「吃音の裏返し」だったそうです。吃音により話を途中で遮られていたからこそ、「自分の考えを話すのなら、まずは相手の話を最後まで聞くべきだと思った」とインタビュー記事で語っています。
自分の話を途中で遮られてしまうのは、誰にとってもストレスとなります。意図や意志に関係なく話しにくさが生じる吃音の場合、「言いたいことがあるのに言えない」状況で遮られてしまうことが多いのです。
こういった経験が重なることは、吃音のある人たちが話すことへの不安を強める要因の一つとなります。次第に話すこと自体を避け、社会生活に影響することもあります。
吃音によって、話すことが滞ったり、時間がかかることがあります。そういった様子に、「間がもたない」と聞き手が話を遮り、相手が言おうとしていることを代弁したり、話題を変えてしまうこともあるでしょう。
しかし、人と人が話す時、「聞かれる」ことが十分に行われることによって、「伝える」という行動が成立します。「話す」には「聞く」ことが欠かせません。吃音のある人たちへの合理的配慮の一つとして、「最後まで話を聞く」ことは安心して過ごすために重要だとされています。
誰もが安心して話せる場をつくる
吃音の啓蒙活動が近年進んではいますが、吃音への正しい理解は不十分です。「ゆっくり話せばどもらない」など、誤ったアドバイスを吃音のある人へしてしまう人が未だに多くいます。吃音のある人たちには、話すことのアドバイスではなく、安心して話せる環境が必要です。
小倉氏と情報番組で共演していた社会学者、古市憲寿氏は、小倉氏に対し「番組中に遠慮なく反論することができた」と対談で述べています。それは、小倉氏が相手の話に耳を傾け、誰もが安心して話せるようにしていたからだそうです。小倉氏が心掛けていた「最後まで話を聞く」ことは、誰にとっても安心して話せる場づくりだったといえます。
20年以上毎朝、「話を聞く」ことをテレビで体現していた小倉氏。奔放な物言いや巧みな話術に注目されがちでしたが、名司会者であった所以は、自身の経験に基づいた「話を最後まで聞く」姿勢にありました。
小倉智昭さんのご冥福を心からお祈りします。
参照
1)小倉智昭、古市憲寿. 「本音」 新潮社、2023.
2)申知仁. “小倉智昭さんに聞く吃音「今も治っていません」 苦手が生んだ司会術”. 朝日新聞デジタル . 2023年5月7日. https://digital.asahi.com/articles/ASR4V4HBMR46DIFI00V.html?iref=pc_ss_date_article. 2024年12月12日閲覧.
3)小林宏明. “お子さんとの接し方の提案”. 吃音ポータルサイト. https://www.kitsuon-portal.jp/parents/care.html. 2024年12月12日閲覧.
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